涙飴
その瞬間、美津菜に口を塞がれた。


「姫月声大きい!」


さっき美津菜だってでかい声で話してたじゃん……と心の中で愚痴を言う。


「だってさ……抱き締められたって……まじで!?」


「姫月が照れてどうすんの?」


そう言う美津菜も顔が真っ赤だ。
可愛い。


「でも何で告白しないの?」

あたしはふとそう思った。
だって、抱き締めるなんて気のない子にする事ではないだろう。
あっちの気持ちは確実なのに、何で美津菜は告白しないのだろう。


「告白したいけど……鳴海、まだ前の彼女の事で引きずってるとこあるみたいだし、それに、宿泊学習で告白するって決めたから。

焦りたくないんだ。付き合う為に告白する訳じゃないし。
まぁ付き合いたいけど……でももっと大切な事ってあるじゃん?
気持ちをちゃんと固めてから、本当のあたしの気持ち伝えたいから」


美津菜の言葉を聞いて、五十嵐が前にあたしに言った言葉を思い出す。

あの時も、五十嵐のお陰であたしはちゃんと前へ進む事が出来たんだ。
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