涙飴
「そんなことないよー」


そう言いながらも、華耶は頬を浴衣と同じピンク色に染めて笑う。

恋する乙女オーラ全開、ってやつだろうか。

あたしなんか、そんな表情した事がない。


「華耶可愛い~!じゃあうちらは女二人で寂しく回ってくんね!」


美津菜に腕を引っ張られながら、あたしと美津菜は教室を出た。


「どこ行く~?
やっぱ何か食べたくない?」

「だね~!……てか美津菜ごめんね~一緒に回る相手があたしで」


「冗談だって!姫月とじゃないと安心して食べ物食べらんないし!」


「確かにあの美津菜の猛獣のような顔は男に見せらんないもんねぇ~」


「ひどっ!」


こうやって冗談を言い合っている時があたしは好きだ。

辛い事、全部忘れられるから。





「ねぇ!五組行かない?」


お好み焼きを頬張りながら、美津菜はパンフレットを渡して来た。


「なんで?」


正直あたしの答えとしては、行きたくない、だった。
大地をこれ以上見たくないからだ。
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