俺はお前だけの王子さま
「ごめ…」


泣きながら謝る渡瀬。


「…………」


一気に冷静になった俺は渡瀬の上から退くと渡瀬を座らせた。


「ごめ…んね」


「いや…俺こそわりぃ…」


謝りながら、

ショックで渡瀬の顔が見れなかった。



渡瀬をまた泣かせたこと。


渡瀬に拒まれたこと…

これは俺自身を拒まれた気がした。



「怒った…?」


渡瀬は不安げな顔で俺を見た。


怒る…?

「いや…怒ってねぇよ」

むしろ怒るとしたら
自分のダサさに腹が立つくらいで…



だけど渡瀬は謝り続ける。


「ごめんね…やっぱり…まだ早くて気持ちの準備が…」


渡瀬が謝るほど
余計に虚しくなってくる。


「もういい…」


俺は渡瀬の頭に手を置いた。


「もういいから」



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