俺はお前だけの王子さま

渡瀬のボロアパート

ボロアパートにつくと、玄関でノースリーブを着た渡瀬が迎えてくれた。


「王子くんから会える?なんて何かあった?」


少し冷やかすような嬉しそうな渡瀬の笑顔。


「…………」


アメリカ行きを知ったら…

渡瀬はどんな顔をする?


「王子くん…?」


無言の俺に渡瀬は首を傾げた。


「いや別に…暇んなったから」


俺は夏の陽射しで汗ばむ首に手を回した。


素っ気なく答える俺に
渡瀬は優しく微笑む。


「じゃあどこに出かける?」


「いや、ここで良いけど…」


「え…?うち?」


渡瀬は少しびっくりしたように俺を見た。


「都合悪い?」


「いや…うち今クーラー壊れてるんだ。」


「あぁ…別にいい。」


俺、クーラー嫌いだし…

さすがに日中は付けてるけど。


「ほんと…?じゃあどうぞ」


渡瀬は少し遠慮がちに微笑むと
俺を中へと招待した。


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