俺はお前だけの王子さま
中に入ると扇風機が回され
窓は全開にされていた。


ほぼ無風なのか窓についた風鈴は鳴らない。


「相変わらずボロくて狭いな」


しかもかなり暑い…


コトン…

渡瀬は氷の入った麦茶をちゃぶ台に置いた。


ちゃぶ台には今まで渡瀬がしていたらしい課題も広げられていた。


「勇気はサッカーの試合で今日は出かけてるの」


「ふーん…」


俺はやりかけの課題を手にとり目を通す。


「あ、ごめん。課題いま片付けるね」


「いやいい。手伝ってやるよ」


「え…?いいの?」


「別にいいに決まってんだろ」


「……」


俺の言葉になぜか渡瀬は少し頬を染めた。


は…?


「…なんだよ?」


「いえ…じゃあよろしくお願いします」


「………」


赤くなる渡瀬に俺まで少し体温が上がる。


渡瀬はいそいそと俺の正面に座った。



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