俺はお前だけの王子さま
―――――――…














ベッドの中で目を閉じる私と王子くん。


ほんの少しの残った時間を私は王子くんの腕の中で静かに過ごした。


王子くんのぬくもりを忘れないように…


時折、王子くんがサイドテーブルに置いた腕時計に手を伸ばし時間を確認する。


それが寂しくて

私は何も気付かないふりをして寝息をたてた。





コト…ン

何度めかの確認の後、王子くんは腕時計を静かに置くと


私を起こさないようゆっくりとベッドを出た。


シュルシュル…


ベッドの足元で王子くんがスーツを着る音がする。


「…………」


本当は起きているのに…


ベッドの中で丸くなり、寝たふりをしているのは何でだろう。


王子くんは最後にベッドサイドの腕時計を手に取ると、それを腕にはめた。


耳を澄ましながらシーツに顔を埋める私。


きつく閉じた瞳からはすでに涙が溢れていた。


そんな私の頭に王子くんの手が触れた。


「渡瀬……」


優しく髪をなでる王子くんの大きな手。


「渡瀬…行ってくるよ」


王子くんは小さな声でそう言うと私の頭にキスを落とした。


「……っ……」



王子くん――…ッ



王子くんはそのまま静かに私から離れた。


遠くなる足音


最後にパタ…ンとドアが閉まる音がした。


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