俺はお前だけの王子さま
両親に見送られた車中


緊張がとけた渡瀬は一気に疲れが出たらしい。


だから俺は日をずらせば良いって言ったんだ。


「…大丈夫かよ」


「ん…?大丈夫」


渡瀬のマンションに向かう中

俺の肩にもたれる渡瀬は大丈夫と強がりを言いながらハンカチを口に当てて辛そうだ。


思わずため息が出そうになる。


「…とりあえず。籍を入れたり一緒に住むのは安定期に入ってからにするぞ」


「………」


「あとお前、これからは優先順位をちゃんと考えろ」


俺の言葉に渡瀬は少し寂しそうにしながらも、少し笑った。


「王子くん…だんだんお父さんに似てきたね」


「あ?」


「ううん、ごめんなさい。」


「………」


「寂しいけど王子くんの言う通りにする」


渡瀬は今回こそ素直に頷いた。




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