過去の秘箱


詩織の背中……。


その背中が泣いている。


その背中が怒っている。


その背中が恨んでいる。


詩織…ごめんね、お姉ちゃんを許して……。


叔母ちゃんと家を出た。


やっぱり止めようかな……足が前に動かないよ……詩織が可哀想でたまらないよ……。


「沙織、行くよ…」


叔母ちゃんが急かした。


何か視線を感じたので、二階を見上げたら………そこに詩織が……窓から私を見てる……羨ましそうな目で……。


詩織は泣いていた。


目が訴えている……お姉ちゃん、私を本当に置いて行くの?って……。


でも……詩織……あんたの顔…その目…憎らしいぐらいお父さんにそっくりなのよ……。

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