ね、先生。
夜の竹やぶの中は、

たまにとても静かで、

たまに鳥の泣く声がして、

そして、

たまに風が吹くと 笹の触れ合う音がした。



さっきまでは不気味だと思ったのに、

ヒトリになって、

涙も枯れると、

今の自分には

似合う場所のような気もしてきた。



ズキズキと痛みを放つ右足は、竹に縋って起き上がろうとしても、どうにもならなく、上半身を起こすのがやっとだった。


竹に背を持たれて、

ゆっくりと見上げると、

笹の間から

キレイな満月が見えた。



「・・・はぁぁ・・。」


小さな溜息をつきながら、先生も同じ月を見てるのかな?って思う。


「・・・くすっ。」


こんな時に先生の事を思う自分がおかしくなる。

そして、

瞳を閉じて、ゆっくりと記憶の中を辿った。

先生と出逢った頃の事を・・・。
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