ね、先生。
今の美加に、
私が第一印象で受けた優しいという言葉は、全く当てはまらなかった―。



「・・・ねぇ、美加。
 負けたとか、何のこと?」


私は少し震える体を押さえながら言った。



私の言葉に美加は呆れる顔をして、


「何のこと~? とぼけて。
 真鍋先輩の事、好きなんでしょ?」


面倒くさそうに言った。



「・・・。」

「ホラ、黙っちゃって。
 一緒にお店言った時もわざと私を奥に座らせて、次の日は先輩待ち伏せて、渡り廊下で楽しそうに話したり。
 今日だってさ、わざとじゃないの~?先輩の気を引かせるためにボーっと突っ立ってさ、、」



  嫉妬。


今の美加の態度には、その言葉が良く似合った。


ここで何を言っても、きっと何も信じてもらえないと思った。

美加を奥に座らせたつもりもなければ、
渡り廊下で待ち伏せてたわけでもなく、偶然会ったってことも。
さっき、ペアに組む相手がいなくて困ってた事も・・・。

そう全て、今の美加には信じてもらえないと思った。


私は自分のタオルを握りしめ、更衣室目指して、逃げるように走った。
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