ただ風のように
「夏々海。いい?」
「亜美先輩、何ですか?」
ゲーム直前に声をかけられた。
「今からのゲームで夏々海はドリブルをしないでみて」
「分かりました」
承諾すると亜美先輩はニコッと笑って体を伸ばしながらほぐした。
「始めるよ。整列してー」
コーチが声をかけて私達はセンターラインに集合した。
「審判は遊汰と海頼にやってもらうことにしたから。私はみんなの動きをチェックしてます。しっかり動くように。じゃあよろしく」
コーチはそう言って遊汰先輩に場所を譲り、コート脇のパイプ椅子に腰をおろした。