ちいさなたからもの
「では、叔父さん・・・ありがとうございました」



桜を背負って、礼を言う。



「いや、僕は何もしていないよ」



困ったように言う。



「ただ、きみの背中を押しただけさ」



「俺はそれによって、大切なことに気づけたんです」



本当に、感謝しなくちゃいけないな、と思った。



「それに、きみが感謝しなくちゃいけない人間は、そこにいるだろう?彼に頼まれただけさ」



それを聞いて、ハッと気づいた。



「・・・父さん、ありがとう」



「まあ、よかったよ。お前には、苦労をかけることになるからな」



そう、これからだ。大切なのは。



父さんのためにも。



母さんのためにも。



頑張らなきゃいけない。



最後に、叔父さんが言った。



「暇ができたら、そっちに遊びに行くよ」



「はい、待ってます」



俺たちは、歩き出した。



長い、道のりを。


< 40 / 43 >

この作品をシェア

pagetop