ちいさなたからもの
ある日、塾から帰ろうとしたときだった。



「成瀬君っ!!」



事務のお姉さんが、血相を変えて俺を呼び止めた。



「どうしたんですか?」



「お母さんと妹さんがっ・・・」



「えっ!?」



「事故にあったって・・・」



受け取った言葉は、絶望だった。



目の前が、真っ暗になった。



そんな・・・



俺はただ、凍りついたように立ち尽くすしかできなかった。



桜は、奇跡的に特に怪我はなかった。



けど。



母さんは・・・助からなかった。



現場を見ていた人の話を聞いたところ、母さんが桜をか
ばったそうだ。



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