あの日の約束
カラン コロン と
目の前の苦い液体が
氷と交ざりあっていく
「‥さーかした」
それは甘くて優しい声なのに
あたしの肩は驚くほど揺れた
「っ‥あ、はい。」
気付けば目の前の人そっちのけで
飲みかけのアイスコーヒーを
ストローでゆっくりかき回してた
―――あぁ、また飛んでた
「相変わらずだね」
そう優しく笑う彼も
今日も相も変わらずに
こんなあたしを叱らない
「すいません‥」
「謝ることじゃないよ」
この人のお腹の中は
どうなってるんだろう
ほんとは黒く汚れた渦が
ぐるぐると蠢いているのでは?
‥なんて、皮肉屋のあたしが
嫌味ったらしく思ってしまう程
彼、結城 翠(ユウキ ミドリ)は
“できた人”だった。