Fahrenheit -華氏-


合コンに参加する男女なんてたかが知れてる。


なんて思ってたけど、結構楽しんだなこれが…


開始して一時間が経ったところで俺はトイレに立った。


「よぉ」


先に来ていた裕二が手を洗ってる。


「よ」


用を足すと、俺も洗面所で手を洗う。


「いい子いたか~?」


裕二がのんびり聞いてきた。


「ん~、まぁあのユカって子は面白いな。結構可愛いし。キャビンアテンダントって聞いてたからもっとお高く止まってるかと思ったけど、結構きさくで」


裕二は鏡の前でちょっと前髪を直しながら笑った。


「良かったよ。楽しんでくれて。あんだけ嫌だ嫌だってぶつくさたれてたから」


あー、髪垂れてきてんな…


そう思いながら俺もワックスでセットした髪をちょっと直した。


思えば真剣に合コンに来るつもりがなかったから、髪のセットも気にしていなかった。


「まぁね。来たからには楽しむよ」


「お前柏木さん一筋じゃなかったっけ?」


裕二が嫌味ったらしく、鏡の奥でにやりと笑った。


「んなアホな。ありゃゲームだ。どっちが早く堕とすかって言うな」


そう、柏木さんに限らず他の女にもそうだ。


恋愛はゲーム。


楽しんだ方が勝ちじゃね?


苦しんだり、悲しんだりする恋愛なんてまっぴら。


たかが恋愛に一生懸命になれる奴の気がしれねぇ。


だから俺は桐島の気持ちも理解不能だし、綾子の気持ちも分からない。






< 136 / 697 >

この作品をシェア

pagetop