Fahrenheit -華氏-
ちくしょう。もっと真面目に英語に取り組んでれば良かった。
でも、英語が不慣れな俺でも最後の言葉―――
Ruka―――ルカと言う言葉は聞き取ることができた。
俺の手の中にある携帯はどうやら“ルカ”なる人間のもので、じゃ、俺のは?
…………
「あぁ!!」
俺は突如声を上げた。
すぐ隣にいた佐々木がびっくりしたように目をぱちぱちさせてる。
「さっきの……」
そうだ!間違いないっ!
さっきの女にぶつかったとき、俺のと入れ違いになっちまったんだ。
偶然にもあの女は俺と同じ機種を使ってたってわけか。
偶然にも。
通話を終えたら待ち受け画面になった。
大きなデスクトップには4、5歳だろうか、可愛らしい女の子のアップが映し出されている。
ちょっと日本人離れした、ハーフっぽい子供だ。
歳の離れた妹か、それとも姪かな?
子供好きなのだろうか。
って、そんなことどうでもいい!
どうしよう。
きっと向こうも困ってる筈だ。
いや……これはチャンスじゃねぇか?
携帯を取り替えるのを口実にまた会える。
それに向こうには今俺の携帯が手元にある筈だから、俺が電話をすりゃ連絡が取れる。
思わぬハプニングだったが、チャンス到来!
俺は自分の携帯の番号をプッシュした。