Fahrenheit -華氏-

ちくしょう。もっと真面目に英語に取り組んでれば良かった。


でも、英語が不慣れな俺でも最後の言葉―――


Ruka―――ルカと言う言葉は聞き取ることができた。


俺の手の中にある携帯はどうやら“ルカ”なる人間のもので、じゃ、俺のは?




…………




「あぁ!!」


俺は突如声を上げた。


すぐ隣にいた佐々木がびっくりしたように目をぱちぱちさせてる。


「さっきの……」


そうだ!間違いないっ!


さっきの女にぶつかったとき、俺のと入れ違いになっちまったんだ。


偶然にもあの女は俺と同じ機種を使ってたってわけか。





偶然にも。





通話を終えたら待ち受け画面になった。


大きなデスクトップには4、5歳だろうか、可愛らしい女の子のアップが映し出されている。


ちょっと日本人離れした、ハーフっぽい子供だ。


歳の離れた妹か、それとも姪かな?


子供好きなのだろうか。


って、そんなことどうでもいい!


どうしよう。


きっと向こうも困ってる筈だ。




いや……これはチャンスじゃねぇか?


携帯を取り替えるのを口実にまた会える。


それに向こうには今俺の携帯が手元にある筈だから、俺が電話をすりゃ連絡が取れる。




思わぬハプニングだったが、チャンス到来!


俺は自分の携帯の番号をプッシュした。



< 15 / 697 >

この作品をシェア

pagetop