Fahrenheit -華氏-
「う…そ、だろ……嘘だと言ってよジョー」
※ちなみにこの台詞は1919年のワールドシリーズで起きた、メジャーリーグ史上最大の「八百長事件」(【ブラックソックス事件】)で、永久追放された有名な選手ジョー・ジャクソンが裁判所から出る時に、熱心なファンのひとりが思わず叫んだ言葉として有名です。
「そんな古いネタはいい。お前それマジなのか…?」
「いや……分かんない。思い当たる節があるぐらいで…」
「思い当たる節ってあんたのことでしょ!名前ぐらい覚えてないの?」
と綾子が勢い込む。
「……名前…いや、覚えてない…」
「このバカっ!!」
綾子がいつもの調子で怒鳴った。
「なんっでお前にバカ呼ばわりされなきゃなんねんだよ!」
「バカはバカでしょ!普通初恋の相手の名前ぐらい覚えてるわよ」
「まぁ待て。啓人に女の名前を覚えてろっていう方が無理だ。女の体の特徴は覚えててもその他はさっぱりなヤツだからな」
「お前だってそうだろ!」
「もうやだっ!!二人とも死んじまえ!!」
そんなこんなの言い合いで、結局結論は出ず、俺は問題の月曜日を迎えることになった。