Fahrenheit -華氏-

■Dress(ドレス)


午前中いっぱいはTUBAKIウエディングの打ち合わせを三人でみっちり行った。


「よし!フォーメーションBだ。柏木さんOK?」


「はい」


「頑張ってください!!」


そんな言葉を交わして、俺は柏木さんと会社を出た。


俺の車に柏木さんを乗せるのは、あの夜以来だ。


つまり―――


彼女のマンションへお邪魔した日以来ってことになる。


これまで俺は自分の車の助手席に女を乗せることに深い意味を感じてなかったけど、今は違う。


いつもより近い距離に俺の心臓がドキドキと鳴りっぱなし。


ギアを入れ替える手にちょっと汗が滲む。


だけどそんなドキドキを知らずに柏木さんはマイペースに書類に目を落としている。


「昨日、ローズウッドに連絡入れてみました。先方は一度ウエディングドレスのデザインをファックスしてくれとのことでした。その上で検討してみるとのことです」


「あ、はい」


相変わらず仕事が速いのネ。


「日本との取引はこれが始めてですので先方も渋面を示しておいででしたので、できるだけあちらの主張を飲んでくれるといいのですが…」


「あ~それは何とか言いくるめるよ。東星紡がワンクッション入ることは伝えてある?」


「はい。何せ規模が違うので、あちらも取引ができることは嬉しく思っておいででしたよ」


よし!そっちは何とかなるってわけだな。


問題はTUBAKIウエディングだ。


今からの商談に全てがかかってるってわけだ。




やってやるぜ!!






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