Fahrenheit -華氏-

「……っふ……」


あたしの頬を伝うのは、生暖かい涙だった。



引っ込めた涙が、唐突にまた溢れてきた。




『か!柏木さん!?どうしたの??泣いてるの?』



部長の慌てた声が電話口で聞こえた。


声の温度が上昇して、緊張しているのが分かる。




でも




今のあたしはそれすら心地がいいの。





「……ごめなさ……。



……どうしよぉ………あたし……寂しい……」




部長の何か宥める言葉が聞こえた。


けどその声は嗚咽に混じってあまりよく聞き取ることができなかった。




『柏木さん、明日の夜空いてる?』


脈略もなく、急に話題が変わってあたしは鼻をすすった。


「……これと言って用はないですが……」


『じゃぁさ!飲みに行こうっ!!んでお酒飲んでいっぱい喋ろう。そしたらちょっとは寂しさが紛れるよ。俺奢るって約束したから』


と言い終わらないうちに部長が言葉を飲み込んだ。


ああ、この間あたしを賭けの対象にしていたから…


そんなに気にしなくてもいいのに。




でも部長の気遣いが今は、ちょっとありがたい。






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