Fahrenheit -華氏-
俺はびっくりして目を開いた。
な…何ていう男!!
許すまじ!!
こんな可愛い奥さんが居ながら他の女と!!?
でもまぁ…男の俺なら少しは納得のいく行為だな。
そもそも男ってのはより多くの子孫を残すための生き物だから、女より性欲が強いし、より良い子孫を残すため多くの女性に目がいく。
だから風俗店が繁盛する世の中だ。
俺は行ったことないけど、俺の連れには大好きなヤツがいる。
それも付き合ってる彼女が居るっていうのに。
それとこれとは別だと言うから手に負えん。
まぁあれだな?女性の「甘いものは別腹」と同じ感覚だろうが。
って言っても俺はあくまで他人事だったから、その場は適当に聞き流していたけれど…
なんてこったい!!
不倫してたんじゃないか、と思っていた張本人が不倫されてたとは―――!!!
柏木さんは頭痛を堪えるように額に手をやった。
「一回や二回ならともかく……何度も何度も……」
「そりゃまぁ…男が悪いわなぁ」
「あたしが浮気を責めると最初は謝るんですけど、こともあろうに
I did not feel the charm in you.と言い出す始末」
急に英語になって俺は戸惑った。
しかもかなり早口の…柏木さんが仕事で使うときの英語だ。
「え?」
「I did not feel the charm in you.Mans are like that.」
柏木さんはゆっくりともう一度繰り返した。
訳すと……
“君に魅力を感じなくなった、男なんてそんなもの”
……………
「ふ!ふざんけんじゃねぇ!!!」
俺は思わず怒鳴った。