Fahrenheit -華氏-

俺の言葉に周りに居た客たちが怪訝そうに俺を見る。


隣に居た柏木さんもびっくりして目をぱちぱちさせていた。


「あ!ごめ…柏木さんに言ったことじゃなくて……」


ってか許せねぇ。お前と俺を一くくりの“男”として言うなっつーの!!


って、男の浮気や風俗通いのきっかけの大半の理由がそうだと思うケド……


でも!中にはそういう男じゃないヤツだっている。


現に佐々木や桐島がそうだ。




あぁ柏木さんも可哀想に…


そんなんだから、男に対して不信感があるわけだね。


だから男に異常なまでの敵対心を持っているわけで…


何となく納得……


そんなこと言われちゃ信じられなくなるのも無理ないよな……


「それで離婚を?」


「ええ……度重なる浮気にあたしがある日プツン」


柏木さんはこめかみのあたりを可愛い仕草で指差した。


そして俺がびっくりするぐらいの笑顔を浮かべた。


俺が今まで見た中で、もしかしたら一番の笑顔かもしれない。


「でもただで離婚するのもしゃくだったから」


「ああ……慰謝料…結構ふかっけたんだ?」


俺の言葉に柏木さんは機嫌を損ねたようにちょっと眉を寄せる。


「お金の問題じゃないですよ。それで片がつくと思ったら大間違い。話し合いがこじれてあたし―――包丁を取り出したんです」




ほ、包丁―――!!?



予想もしてなかった言葉に俺がさーっと顔色を変えた。







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