Fahrenheit -華氏-
………へ?小さい頃……?
親父はロレックスの腕時計に視線を落とすと、
「む。いかん。彼女を待たせてある。それじゃ、私はここで失礼するよ。綾子くん、ご苦労」
「お疲れ様でございました」
綾子が丁寧に頭を下げ、親父は颯爽と行ってしまった。
な……
どういうことだ――――!!!
「さ、あんたはこっち」
綾子が俺の腕を引いて、親父の出て行った正面玄関と反対側の従業員出入り口に向かった。
「や。ちょっと待て!俺は…」
「柏木さんのことなら大丈夫よ。別に二人はそうゆう怪しい関係じゃないから」
そ…それは何となく分かる。
親父はたぶん純粋に食事をしにいくだけだ。
………たぶん。
そう信じたい。
もし、親父に変な気があったのなら…
親子どんぶり―――!!!!
うげぇ
ありえねぇ!!