Fahrenheit -華氏-
俺の質問に二人して顔を赤らめると、
「い、言うべきかな?」
「そんなの嫌よ」
「だってこいつは柏木さんのこと赤裸々に語ってくれたぜ?」
赤裸々って…
聞いてるこっちが恥ずかしくなってくるぜ…
「別に。話したくなきゃ話さなくていいよ。大体想像はつく」
俺はちょっと面倒くさそうに言うとタバコに火をつけた。
「想像て?」
綾子がちょっと顎を引いて、俺を見てきた。
俺はことさら他人事のように口を開いた。
じゃなきゃ、こっぱずかしくてこいつらの顔を見れねぇ。
「だてに歳は食ってねぇよ。男と女がくっつくタイミングていやぁ、つまりそういう具体的な何かがあったってわけだろ?想像したくないけど」
「……想像しないでくれ」
裕二が額に手をやった。
「……桐島くんの結婚式あったでしょ。あんたは三次会、四次会だっけ?ま、いいか。それで帰っていったけど、あたしと裕二はその後裕二のマンションに行って……」
と言って綾子は言葉を濁した。
…………
「ヤっちゃってわけ??」
「そんなストレートに言うなよ!」
裕二が俺に向かっておしぼりを投げつけてくる。
「何だよ…ビンゴかよ」
俺は顔の前でおしぼりをキャッチすると、再び二人を交互に見やった。
綾子は顔を赤らめて
「あたし!お手洗い!!」
と言って席を立った。