Fahrenheit -華氏-

■Excellent condition(好調)



その次の日も、緑川の顔色はすぐれなかった。


次の日も、次の日も……


明らかにいつもの毒気がない。まるで借りてきた猫のように大人しくしている。


瑠華の厳しい態度にも、言い返すことなく。


本性を表した俺に、猛アタックをかけてくるわけでもない。


何だか気が抜ける……




それとなく瑠華に聞いてみようかと思った。緑川の今の状態を。


でもやめた。


そもそも瑠華と緑川がそんなプライベートのことを話し合う仲じゃないし。


瑠華が緑川の不調に気づいて、何か勘付いたかもしれないけど、


そうだとしても、緑川のことを俺達が話し合ってどうする?


俺らはあくまで他人だ。


中途半端に首を突っ込むのは、俺にとっても緑川にとっても―――そして瑠華にとってもいい結果を生まない気がした。


ようは関わりたくないってことだ。




そして迎えた金曜日。



今日は経理課の連中との懇親会の日だった―――






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