Fahrenheit -華氏-


「お疲れ様で~す♪」


と定時10分前にトイレから戻ってきた緑川はバッチリメイクで、復活していた。


30分も席を外してるから、何かしてるとは思ったけど。


やる気満々だな。


そして……


自分のデスクで何かのドリンクを飲んでいた瑠華は、透明のプラカップを持ち上げ俺の方を見てきた。


猫みたいな目をぱちぱちさせて、瞳の底に興味深そうな色を浮かべていた。


な…なに?


「タピオカって下から見ると、結構気持ち悪いですね」


う~~~ん…こっちも絶好調♪


何でそう思ったのかは、敢えて聞くまい。


瑠華って時々、突然変なこと言い出すんだよね。


それもかなり天然的発言。


ま。それも可愛いんだけどね♪


とりあえず、飲み会前の女性陣のメンタル面に特にこれといって良い意味でも悪い意味でも、変化はなさそうだ。


「柏木さんと飲み会は二回目ですね♪」


と佐々木も楽しそう……


そうだよなぁ。佐々木も経理の若い女の子たちと飲み会開くって言ったら嬉しそうにしてたもんな。


でも……


「今度は酔いつぶれないようにしますね!」


と瑠華を見る目は…どことなく熱がこもっている!


さ、佐々木の目的は瑠華か―――!!!



「飲みすぎにはウコンが効きますよ」なんてのんびり返事をしている瑠華は佐々木の下心に全く気づいていない。



緑川だけ気をつけていればいいと思ってたけど、思わぬ敵がすっげぇ身近に居たことに俺は慌てた。




やばい!!気が抜けない!









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