Fahrenheit -華氏-


瑠華はびっくりしたように俺を見上げる。


でも手を離そうとはしなかった。


「部長……気づかれたらどうするんですか?」


「そのときはそのとき。何とかなるだろ」


「随分と、楽観的ですね」クスッと笑って、瑠華も手を握り返してくれた。


それが嬉しくて俺はちょっと微笑むと、


「カラオケ、行ったことある?瑠華は何歌うの?」と照れ隠しに聞いてみる。


「行ったことはありますけど、歌いませんよ。下手なんで」


「え?そーなの?」意外だ……


「ええ。部長は、上手そうですよね。何て言うか女の子の好みそうな歌いっぱい知ってそう」


あはは…ってまぁ当たってるだけに、何も言えませんが。


「上手いかどうかはよく分かりません。それにここ最近行ってないから歌えるかどうかも怪しいもんだ。ま、みんなの盛り上げ役かな?」


「じゃぁ私は部長が歌うときタンバリン鳴らして盛り上げますよ」


「タンバリン(笑)」想像できねぇ。


そんなことを話していると、前を歩いていた佐々木が出し抜けに振り返った。


佐々木は俺達を見ると、びっくりしたように目を開く。


「わっ!」小さく驚いて、慌てて手を離すも、佐々木にはばっちり見えたみたいで、俺の元へ歩み寄ってくる。







「今、手繋いでませんでしたか?」







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