Fahrenheit -華氏-


部屋が立ち並ぶフロアを通過するときの暗証番号を瑠華に教えてもらって正解だった。


一階のロビーでまさかの門前払いをされなくて済みそうだ。


目的の47階、4705室の前でインターホンを押すときはさすがの俺もドキドキした。


「………はい」


瑠華はすぐに顔を出してくれた。


だけど背後で大音量に流れているのはバレエ音楽「ロミオとジュリエット、モンタギュー家とキャピレット家」


何で俺がバレエ音楽なんて知ってるかって??


昔バレリーナと関係を持ったことがあるから…ってそんなこたぁどうでもいい。


出迎えてくれた瑠華の目は据わっていた。


加えて、まるで怒りを表しているかのようなバックからの重低音。


※音声でお聞かせ願えないのが残念です。気になる方は、You Tubeなのでごらんくださいませ(*^_^*)




ぅわ゛!





瑠華は俺を見上げると、「どちら様ですか?」と首を傾げた。


「へ…?」


ヤバイ!完全怒ってる!!


「…あ、あのぅ瑠華ちゃん…?」


「Kiss my ass.」


瑠華は冷静にそう言って扉を閉めようとする。


へ…?キス…?怒ってるんじゃないの??


ってそんなこと考えてる暇ない!!


俺は慌てて扉の隙間に脚を滑り込ませた。


さながらしつこい悪徳セールスマンのように。






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