月影
「深幸ちゃんは、今日はお休み?」

聞かれて頷いた。

「はい。ちょっと、気分転換というか、なんというか」

あそこで何をしていたのかなんて聞かれたら、何も言えなくなる。
そう思い、特にあそこでいたことに、理由はないと強調して答えた。

「そっか、受験生だものね。たまには息抜きしなくちゃね?」

運ばれてきたコーヒーに、砂糖を入れて混ぜながら、玲子が言う。
深幸は少し困惑した表情になった。

「あの…受験生って、なんで知ってるんですか?」

聞かれて玲子は、笑って答えた。

「あぁ、ごめんなさい。政宗から、あなたの事は時々話を聞いていたのよ」

急に政宗の名前が出てきて、深幸は驚く。

「彼には時々、番組に出てもらっているんだけど、空き時間にね、たまに話をするんだけど、いつもあなたのことばかり話しているから」

クスクスと笑う玲子に、深幸は恥ずかしくなり顔を赤くして俯いた。


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