月影
「言ったでしょう?ここはもう、戦国の時代じゃないって。あなたはそうやって、誰かに気持ちを伝えていいのよ」

「俺、は」

その後は、言葉が続かなかった。
目からこぼれ落ちる、熱い雫が、静かに。小太郎の頬を伝っていく。

声を殺して、静かに泣く小太郎を、玲子は優しく微笑みながら見守った。


あなたはあっちの世界で、幸せになれたのよね?


幸姫の手紙を思い出しながら、玲子はそっと、目を閉じる。


だから私は、あなたを守ってくれたこの人が幸せになれるように頑張るわ。
あなたもきっと、それを望んでいると思うから。

ね、幸姫?


静かに、夜は更けていった。
< 90 / 152 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop