ひねくれ双子の険しい恋路



『離せ変態っっっ!!!』


――ドスッッ


「うっ…!!」


ものすごい音と、麻生の苦しそうな声が聞こえた。

それとともに、手首に自由が戻る。


運よくあたしの膝が、麻生の鳩尾(みぞおち)に入った…


あたしはその瞬間を逃さずに、走った。



痛くて、怖くて、上手く息が出来なかったけど、走った。


どこに向かうのかも考えられなかった。


ただひたすらに走った。


走って、走って、走って――――



生徒玄関で靴を脱ぎすてて、靴下のまま学校に入った。


そのまま、近くにあった女子トイレに駆け込んだ。

慌てたせいでスリッパが左右反対だったけど、それすら気にならなかった。



――バタンッ、ガチャ。


『はぁ、はぁ、はぁ…はぁ』


洋式のトイレに座って、胸をおさえた。


ドク、ドク、ドク、ドク、ドク…


心臓が痛い。

ありえないほどに早い鼓動。


落ち着け、あたし。

落ち着け、落ち着け、落ち着け…


『はぁ、はぁ、はぁ…』


息はだいぶ楽になってきたけど、心臓はうるさいまんまだった。



『はぁ……』


少しじっとして、やっとちゃんと息ができるようになった。


そして、あたしの手が震えてることに気がついた。






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