【短編】10年越しのバレンタイン
 カフェを出た私は、街を歩いて住宅街にある公園にたどり着く。


「今日は、よく晴れてるなっと」

散歩道の様な緑あふれる公園の中を進み、ベンチに腰を下ろす。

おもむろにバッグを開いた私は、中からあの箱を取り出した。

それを小脇に置くと、同じく取り出した本を開いて読み始める。



 私は2月14日を、いつもこうして過ごしてきた。

行方のないチョコを1つ持って。



会えるかどうか分からない、あの人を待ちながら。





―――それは、10年前の今日。



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