オアシス


そして、電車に乗ると準平のことを思い出してしまう。東京のような大都会にも、あんなに親切な人がいるなんて。必死で助けを求めていた私に、冷静にあたたかい手を差し伸べてくれた人を絶対に忘れてはいけなかったのに。

冷たいコンクリートの中で、優しさを見つけた瞬間。

砂漠の中で、オアシスを見つけた感動。

“東京の人間じゃないでしょ?”

“中野……俺、吉祥寺まで行くから一緒に行きますか?”

“見捨てたりしませんよ”

準平の、言葉のひとつひとつを思い出す。

あの時の、一瞬一瞬がよみがえる。

この広い世界で、また会えた。



また、

会えたんだね……。



私は、電車の窓に映った自分の隣に準平がいるような気がしてふと横を向いた。

まさか……そんなことあり得ない。

小さくため息をつき、再び窓の方へ向いた。

色々なことを思い巡らせてる間に、私を乗せた電車はもう目的地へ辿り着こうとしていた。

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