オアシス
「早く食えば?」
準平が冷めた感じで言った。
準平の一言で、ふと我にかえるはるか。
茶碗と箸を置き、テーブルの上に頬杖をついた。
「準平は冷たいな」
「そんなつもり、ないけど?」
準平は、頬杖をついているはるかの目の前に茶碗を突きつけた。
「何?」
「おかわり。あ、ついでに味噌汁も」
「はいはい」
「はるか、いつも悪いな。俺達のためなんかに」
「そんなこと気にしないでって、いつも言ってるでしょ? ここの家の家事は、私が好きでやってるんです。オッケー?」
「……オッケー」
「準平は?」
「オッケーっすよ」
はるかはため息をついた。
一日での最後の仕事は晩御飯の後片付けだ。手早く済ませ、はるかは帰る準備をする。
「じゃ、またね」
「おう! またな」
カツカツカツッ……
アパートの横の階段を降りる音が聞こえ、それは次第に闇の中へと消えていった。
二人への想いは、まだ秘密にしておこう。