オアシス


「美味いね。はるかは本当に料理が上手だなー」

兄の聡は嬉しそうに言い、缶ビールを開けた。

「料理が上手くても、誰もお嫁にもらってくれないんだよね」

意味深な発言に男二人は黙った。

「そんなことないと思うけど。なぁ、兄貴」

「うん。何なら準平がもらってやれよ」

「俺はまだ無理だよ。兄貴の方こそもらってやれよ」

“この二人、私のこと好きなんだな。私も好き……聡も準平も。でも絶対にそんなことは言わない。私一人の秘密”

二人のやり取りに、はるかはズルい目をした。優越感に浸っている。

「もうやめてよ、二人とも。くだらないこと言わないで」

頬を膨らませ、上目遣いに二人を交互に見た。

「またそんな顔する……」

聡はなぜか恥ずかしそうに言った。実は、はるかのこの顔が好きだったりする。はるかもそのことに気がついているから余計企む。

「だってぇ~」

茶碗と箸を持ったまま、頬を膨らませたまま上目遣いに二人を交互に見続けていると、
< 59 / 123 >

この作品をシェア

pagetop