空を泳ぐさかな 【短編】
夕方定時の防災無線サイレンが公園中に鳴り響いた。


「もう帰らないと。
じゃあね、チヒロさん。
今度シャボン玉吹くときは、楽しい事も考えた方がいいよ」


少年は、虫取り網を片手に、にこやかに手を振って去っていった。



最後までマイペースな不思議君。



少年が横断歩道を渡るのを見送って、私は小瓶のふたを開けてみた。


入っていたのは、やっぱり薄紫色のあめ玉。


そのあめ玉をそっと口に放り込むと、なんだか懐かしい味がした。


甘くてすっぱいブドウ味。




明日はたぶん雨が降る。



明日は日曜日だから、家でじっとしていよう。



雨がなにもかも洗い流してくれるはずだ。


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