桜
「うち、帰らないの?」
『また心配でもしてるつもり?』
…また
ってことは覚えてるんだ。
酔ってる訳ではないみたいだな。
「もう夜中だし、」
『いーじゃん夜。誰の顔も真っ暗ではっきり見えない』
「いや、」
『朝は嫌いだな。長くてだるい一日が始まるんだもん』
「……それでもさぁ、そろそろ帰ったほうが」
『………わかってる。もう少ししたら…帰るから。』
その表情は夜の暗さではっきりとは見ることができない。
でも帰る気なんてサラサラないんだってことくらいすぐにわかった。