呪縛の蜘蛛

俺は自宅近くの喫茶店に入った。

いつも注文するコーヒーに、いつもは入れない砂糖とミルクをたっぷりいれる。
いつもと同じことはしたくなかったのか、ただ気分的なものだったのか、それは自分でも分からない。
ただ砂糖とミルクを入れたコーヒーはいつもと変わらない味だった気がした。

「中野くんでしょ」
後ろから声がした。
声の主が誰なのかはすぐにわかった。
「どうしたの、最近授業出てないよね」

「うん。最近ちょっと気分が乗らなくて」
俺は金田のことを遠回しに言った。金田の話題を出すことで、金田の件で自分への疑いがないか安心を得たかった。
「ああ、金田くんのことね」
彼女は俺の期待通りの返答をしてきた。

「うん。」

「中野くん金田くんと仲良かったからね」

「うん。」
金田の話にはなったが何を話していいか分からない。

「由佳ちゃん休憩終わりねー」
「はい。すぐ戻ります。」

「じゃあ私バイトもどるね」
そう言うと彼女は店の奥へと入っていった。
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