野球部のあなたとあたし
しばらく歩いて、人通りの少ない道まで来た。


立ち止まって、悠の方向に振り向く。


鋭く、どこか優しい光を放つ瞳に吸い込まれそうになる。


でも絶対揺るがないんだから。


「……やっぱ、付き合ってくれない?」

「ふざけないでよ。その気は全くないって言ってるでしょ」

「そうか……」


悠はまだ期待していたのか。


呆れてため息すら出て来ない。


「聞きたいことがあるの。2人はまだ付き合ってるんでしょ?」

「え…と……」

「ごまかさないで。さっきの坂本さんの態度でわかったけど、悠の口からはっきり言って」

「……ああ」

「坂本さんと付き合いながらあたしと付き合うって、また浮気するつもり?まじないわ」

「違うっ。おまえがOKしたら、坂本とは別れるつもりだった……」

「どーだかね。で、あたしが浮気を発覚する前、どっちから付き合おうって言ったの?」

「……坂本から」

「そう……」


ちょっとだけ安心した。


悠から坂本さん言ったのなら一生許せなかったけど、坂本さんから言ったのか……。


ちょっと複雑な気分……。


でも、その坂本さんの告白を受けて、2人が付き合いだしたのは事実。


悠の中であたしは坂本さんに劣っていたってこと。


「あたしはもう悠と関わる気はないから」

「…………」


悠は何も言わない。


固く引き締めた表情からは、何を考えているかはさっぱりわからない。


まあ、今のあたしには関係のないことか……。


心臓がばくばくいってる。


告白する時みたいに……話がまとまらなくなる。


「……あたし、悠のこと……本気で好きだったから……」

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