ありがちな恋
あれから時は過ぎもう数年経った。
一つ歳が違うあいつは今日、俺の通っている
高校に入学することになる。学力はそこそこ。
大学の進学率がいい分けでもなく、ましてや
全国大会に行く運動部もない。そんな普通の高校。
そんな高校だからこそ俺はこの「凪砂高校」を選んだ。
平和で平凡な人生を送りたい俺にとっては。都合のいい
学校なのだ。あと、徒歩10分もかからないから尚よろしい。

制服に腕を通し、ズボンをはき居間に降りてパンを焼き
コーヒーをすすり、天気予報を確かめる。今日は晴天なり。
新入生にとっては入学びよりと言えよう。・・・あいつにとっても。
そうこうしてるうちにそろそろ出かけなくてはいけない時間になった。
靴を履き玄関を開けたとたん耳をつんざく声が聞こえた。

「お兄ちゃん!おはよう!今日は絶好の入学びよりだね!」

どうしたら朝早くこんなテンションが出せるのだろうか。

「うるせえよ、愛奈。俺は低血圧で朝弱いの知ってるだろ?
もう最悪だよ。俺の心は曇天だよ。土砂降りだわ」

こんな俺の嫌味を華麗にスルーをして愛奈は言う。

「そんなことより早くガッコー行こ!時間は私達のことを
待ってくれないよ!私達はもうビリケツだよ!」

うっ、めちゃくちゃ笑顔だ。嫌な予感してきた。

「レッツゴー!!」

愛奈は俺の手をとり学校に行こうとする。

「おい!アホ!何してんだよ!」

そんな俺の言葉に対して愛奈はきょとんと首をかしげながら

「何って何?早く行こうよ~」

一つに束ねてるポニーテールが揺れる。馬みてぇ。いや、そうじゃなくて!

「手をは・な・せ!学校に手を繋いでいくバカがどこの世界にいる!?
恋人同士じゃあるまいし!」

強く言ったのが効いたのか愛奈はしょんぼりしている。まあ手は離して
くれたからこれでいいか。

「ほら、行くぞ」

「・・・うん」


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