ありがちな恋
放課後になり掃除の時間。
愛奈はクラスの女子に囲まれていた。

「ねぇねぇ。あの先輩って誰？知り合い？お兄ちゃん？」

愛奈はとても答えたくなかった。なぜなら
女子が健のことを聞く大抵の理由がお近付きになりたいとか
付き合いたいとか言う人だからだ。

「え～と、え～と」

そんな愛奈の心境を察することなく女子は質問攻めにする。

「そんな勿体ぶらずに教えてよ～」

一緒に帰る約束に間に合わなくなるかもしれないという不安と、
早く開放されたいと思う気持ちのせいで、愛奈は口を割らずには
いられなかった。

「近所の人・・・だよ。一時期家庭教師してもらってたんだ」

「今度紹介してよ！」

愛奈はとっさにうそをついてしまった。

「え～と、健先輩には好きな人がいるんだって！
だからそういうのはちょっとーね？」

自分で言っときながら不安になる。愛奈ですら
健の好きな人が誰なのか知らないのだ。
聞きたい気持ちは山々なのだがやっぱり怖い。
恋する少女はいつでも複雑だ。
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