ありがちな恋
さすが愛奈と言えよう。これがこいつなりの
気の使い方。こうやってちょっとからかって
最後に落としてくる。俺とは違ってすごい奴だ。

今まで外見のことには触れなかったが
こいつの見た目は幼馴染の贔屓目で見てもかわいい。
それにこのとっつきやすい性格のおかげですぐ彼氏とか
友達ができることだろう。・・・悪い虫は俺がぶっ飛ばすがな!
なんというかお父さんが娘を思うような心境だ。
他意はない。誰がなんと言おうと他意はない。本当に他意はない。
大事なことなので三回言っておく。

「先輩!これおいしいよ!おごってくれてありがとう!」

「おお。ならよかった。そんなに食ったら腹壊すぞ」

「壊さないも~ん」

いや、マジで壊すぞ?経験者は語る。

「まあ食ったら帰るぞ」

「うん」

もうすでに半分はなくなっている。食べるペースが
半端ではない。常人では無理だろう。お菓子を食べるときの
乙女は本当に怖い。

「ていうか愛奈。高校入学おめでとう。よかったな受かって」

「あ、うん。楽勝楽勝♪」

バチン!

「いたッ!何するんだよ!お兄ちゃん!」

「脊髄反射で叩いてしまった。それよりどの口が楽勝だって?
俺は忘れないぞ!あの地獄の日々!お前に勉強を教えてって
言われて家庭教師まがいのことをした、あの青春のかけらもない
日々を!それとお兄ちゃんって呼ばない!」

「えぇー、いいじゃん学校じゃないんだし」

愛奈は叩かれたオデコをさすりながら文句を言う。
まあ放課後はいいとしよう。

「許可してやろう。でも学校の外ならって意味だからな」

「なんかえらそう・・・」

「うるせぇ」

ほんとに口の減らない奴だな。こいつと何十年も一緒に
過ごした俺のことを誉めて。誰か。

アイスを食べ終った愛奈と一緒に帰路に着く。
・・・ホント疲れたわ。
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