ハカナキカヲリサクハナノヨウニ
そのギターには見覚えがあった。
懐かしさがあった。
ボディもネックも随分くたびれた感じもあり、
3年の月日以上の不思議な風格があった。
けれど、これは間違いない。
彼女のギターだ。

「あの、これ…」
「はい」
店員が駆け寄る。
「これ、持ってみていいですか?」
「どうぞ。よかったらアンプ通して音も出してみてください」
せっかくなので、アンプに通してみた。
ネックを持つと、明らかに反っているのがわかる。
チューニングはめちゃめちゃ。
ピックガードは幾分削れていて、
昔の面影を探すのに苦労した。
ただ変わらないのは、
後付けのピックアップ。
スモーキーイエローのボディペイント。
音出しもしたが、昔の面影まったくなし。
酷いものだった。
「あのこれ、いつから置いてるの?」
「3日前くらいですねえ。特に補修とかはうちはやってないので…」
「ああ、そう」
「まあ練習用で使うなら十分じゃないですかね?」
「……」
結局買うことにしたものの、
まともに弾けるようにするまでが大変だ。
ケースもない剥き出しのままが哀れなので、その足で「ジーブ」へ向かった。
馴染みがあった楽器屋だ。
3年振りに足を運ぶと、
DJ関連のアイテムが前面に出ていて、
ギターやベースはすっかり奥に追いやられていた。
「いらっしゃい。どのような御用件で?」
「あの、シバタさんは?」
「シバタですか?少しお待ちください」
しばらく待つと、
「どうもシバタですが…」
「…どうも、お久しぶりです」
「…おおー!久しぶりじゃん。どんくらいぶりよ?」
「3年、ですか…」
「もうそんななるっけ?かー、早いもんだねえ」
「ええ」
「元気してた?あれからさっぱり見なかったからさあ」
「まあ、全然なにも出来なかったんで…」
「…そうか。あんときからまあこうして、また手にしただけでも、前進じゃねえかな?」
シバタさんはあの時スタッフで参加していた。
再会自体その時以来だ。
もちろん僕が味わったあの悲劇の顛末も、知っているだろう。
励ましと再会の言葉が目立ち、
それ以上踏み込んだ言葉を控えていた。
シバタさんは言った。

「で、どうしようか、そのギター」
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