いいから私の婿になれ
だから。

真琴は紙袋を片手に、黎児の住む学生寮の前に立つ。

生まれて初めてコスプレ専門店なるものに入り、メイドコスプレ用のエプロンドレスを購入してきたのだ。

「言っとくけど、ウチはオタクに目覚めたんとちゃうで?」

誰にともなく、一人呟いてみる。

「ただ…ウチがメイドさんの格好したら、エリアルが戻ってきたみたいで…黎児元気出るかなあって…」

そう、それだけ。

「別に黎児の事励まそうとか、元気な黎児の方が好きとか、そういうんとちゃうねんで?」

一体誰に言い訳をしているのか。

階段を昇り、2階の黎児の部屋のドアの前。

高鳴る胸の鼓動を抑えながら。





「失礼致しますっ、ご主人様っ!」





真琴は精一杯の笑顔を作ってドアを開けた。



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