【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐





暁くんの愛車に乗り込んで数分。





もうすぐ家に着く。





車内を照らすのは、ときどきすれ違う対向車線のライト。





そのたびに、暁くんは眩しそうに目を細めた。





もうすぐ今日が終わってしまう。





けど不思議と、この前のような虚しさは感じなかった。






また来てもいい、と言われたから。






また明日、暁くんに会えるから。






そのことが、本当に嬉しくて仕方ない。






「今日は楽しかった?」






暁くんに尋ねられ、大きく頷く。




それをちらりと横目で確認した暁くんは、今度は嬉しそうに目を細めた。






「よかった、俺も楽しかったよ。今日は、ありがとう。」







なんて、こっちが恥ずかしくなっちゃうような台詞をさらりと言っちゃうとこはまだ慣れない。






熱く火照った頬を、そっと両手で隠す。






つくづく暗い車内でよかったと思った。







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