【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
「…仕方ないんじゃない?君もまだ中学生だったんだし。俺もそこまで鬼じゃない。それでも、今まで柚を守ってくれたことには感謝する。」
「…あなたに、感謝される筋合いはないっす。」
「そう?」
二人の言い合いする姿が、なんとなく瞼の裏に浮かんで可笑しかった。
「俺、やっぱあんた嫌いっす。」
京ちゃんが、思い切り険を含む声で言い捨てた。
「それはどうも。」
それに対する暁くんの返答は、実に明るい。
笑みさえ浮かべているのが想像に容易かった。
あーあ、暁くんってば。
続いて京ちゃんの深いため息が聞こえた。
あー、そろそろ起きなきゃな。
暁くんはあたしが起きるまで帰らないって言ってるし…。
でも今さら起きにくかったりもする。
でも、いつまでもこうしてるわけにもいかない。
ゆっくりと瞼を開け、首を二人の方へ回した。
「…柚?起きた?」
最初に気付いてくれたのは暁くんだった。
「このばか!心配かけさせやがって。」
暁くんの後ろで京ちゃんが眉間にシワを寄せる。
でも一瞬、ホッとした顔をしてくれたのは見逃さなかった。
“ごめんなさい…”
口パクで言ってみるけど、上手く動かなくて二人には伝わらなかった。
何故だか身体も重い。
ダメだ、とボードを探そうと起き上がる。
「柚、起きない方がいいよ。倒れたんだ。少し熱もあるみたいだし」
倒れた?熱?
そこで初めて額に熱冷まシートが貼ってあることに気が付いた。
「バカ。お前、ちゃんと飯食わなかったんだろ。俺が持ってきてた惣菜も冷蔵庫に全部あったしな。そんなんで倒れねぇ方がおかしい。」