【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐





「皆さん、聞いてほしいことがあります。」




あたしの心は、ずっと穏やかだった。





「あたしにはかつて、大切な仲間がいました。一緒に夢を目指す、親友がいました。」




きゅっ、と繋がった手に力がこもる。




「あたしは彼らとバンドを組み、親友と共にプロになることを目指していました。けれど、その親友は…。」





アキちゃんは…。





「あたしの歌を守り、死んでしまいました。けれどあたしには、彼女のそんな真意に気付けず、歌を封印してしまった」





今もまだ、後悔している。



あの3年間の日々を、今も。





「そして、約束しました。絶対に歌をやめない。いつまでも、歌い続けると。夢を叶えると。」





アキちゃんのベースにかけた、二人の願い。





「あたしは歌いたい。そしてその夢を、ここで叶えたい。」





ここにいる、みんなと。






だから、あたしは。






「…あたしを、Rainのボーカルにしてください。」





あたしの夢は、AriceからRainへと変わって、別の光を放つ。





「待ってました。」




ニヤリ、と原田さんが口角をあげた。






「ようこそRainへ、柚!」





その言葉を皮切りに、一斉にクラッカーが鳴り響いた。










***********







「…アキちゃん、あたし思うんだ」




あたしは、宮寐と彫られた黒い墓石に語りかける。




「あのとき、暁くんとあたしが事故に遭いそうだったとき。」



今でもよく覚えている。








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