【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐





「あれ、いたんだ?ごめん、気付かなかったよ」





わざとらしく、暁くんが言った。





「よく言うよ、まったく」





それに対し、愁生さんがやれやれと肩をすくませてみせる。





「それで、みんなでなんの話をしてたの?」




あたしの隣に座った暁くんは、あたしの髪を梳きながらゆっくりと尋ねた。






「え、えっと…、みんなにRainの話を聞いてたの」





「ふぅん、そうなんだ」





暁くんはどこか楽しそうに、ふわりと目を細めた。




ヴァイオレットの瞳に捕らえられて、目が離せなくなりそうになるのを必死にこらえる。





…暁くんはもう、色を隠すことをしなくなった。




そうしたのは最近からで、どういう心境の変化なのかはわからない。





けれど、たぶん…。





「そう言えばまだ話したことなかったね。」




「う、うん」





「なら、聞きたいことを聞いて。好きなだけ、教えてあげるよ」





暁くんは気付いているのだろうか。



その紫の瞳が、どれだけあたしを惹きつけて止まないのか。




そんな瞳でふわりと微笑んで見つめられるだけで、どれほどあたしがドキドキしているのか。




「…柚?」





いつの間にか、ぼんやりとヴァイオレットの瞳に見いっていたらしい。





返事をしないあたしを、心配そうに暁くんが覗き込んだ。





「え、あっごめん!なに?」





「Rainの話。聞きたいことはある?って」




「あ、うん。そうだったよね、ごめんなさい…。」





「…ぼんやりしてる柚も可愛いけど、心配だな。なにか悩みごとでも?俺でよければ、聞くよ?」




「ちっ、違うの。ちょっと、ぼんやりしちゃっただけで、別に悩みなんて…。」






…言えない。



暁くんに見とれてたなんて、恥ずかしくて言えない…!!




< 446 / 450 >

この作品をシェア

pagetop