たった一人…。

部屋を出て、荷物を抱えて車へ向かう。


歩きながら、涙が頬をつたうのが分かった。

早く車に乗ってしまいたいのに。
駐車場ってこんなに遠かったっけ…。

早く大きな声で泣きたいのに。


どうして…。

どうして、今なの…。



車に乗った私はとにかく彼のところから離れた。

近くのコンビニに車を停め、ただただ泣く。

声をあげて。小さな子供みたいに。


車の側を通る人には必ず聞こえてるはず。
私の泣き声。


泣きつかれた私はボーッと外を見つめる。

そして、思い出す。

彼の顔、彼の声。
彼の匂い、彼のぬくもり…。



自分についてる彼の残り香が、ほんの少しだけ私を安心させてくれた。

彼の全てが私の中にある。

若干の彼の香りを大事に記憶しながら、車を走らせた。




自分の部屋に着くと、私はすぐに携帯を取り出した。



『無事に家に着いたから。安心して。明日からもちゃんと…』

打ちかけたメールを消し、電源を切った。



そのままベッドに倒れ込み、すぐに眠りについた…。

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