たった一人…。


それから、3日間ほど彼の部屋に居た。



朝、彼が部屋を出ていく時には『どこへも行くなよ』と言って出かける。

周りからみたら、これは軟禁状態なのかな。

でも、これが彼の優しさなのは私が一番分かってる。
だから、どこへも行かない。


仕事が終わると必ず連絡して来て、二人で買い物へ行き、一緒に食事をする。

『赤ちゃんの分も。いただきます…。』


私達には心の中で育つ子供がいる。
そう思いながら、
そんな新婚ごっこが楽しかった…。





だけど、そんな幸せはそう長くは続かなかった…。




ある日、仕事から戻ってきた彼の顔色が良くないのはすぐに分かった…。



「どうしたの?」


「実は…。」



「嫁が倒れたんだ…。病院に運ばれて、そのまま入院になったらしい。」




そう言ったまま、下を向いて黙ってしまった…。



「帰って…。家に帰ってあげて…。病院にも行ってあげて…。」



私は自分の荷物をまとめて、部屋を出ようとした。



「すまん…。こんな時におまえの側を離れたくないんだけど。本当にすまん…。」




彼のその言葉を最後に私は部屋を出た…。




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