ズボンの話
青いズボン
僕は、友人たちも普段穿いている
青いズボンがかっこいいと思った
僕はそのズボンを買いに行った
青のズボンと 黒のズボンがあった
当然青を買った 迷いもしなかった
これでいいだろう 真っ青なズボンだ
しかし、友人たちは
徐々に赤いズボンを穿くようになった
僕は周りに合わせて、
本質的には違うが、友人たちに
一部同調するような気持ちもあって
赤いズボンを買うようになった
みんな赤いズボンを穿くようになった

長い時間が経って、青いズボンを
作っていた仕立て屋の人に出会った
昔から変わらず青いズボンを作っていた
とても大事そうに、作っていた
赤いズボンは工場で量産され
作った分だけ売れていく
しかし青いズボンは
作った分だけそこに溜まっていった
やがて仕立て屋は死に
青いズボンなど無かった事になった
なんということだろう
僕は嘆いた
一時はあんなに好きだった
丈夫で美しい青いズボンは
工場で沢山生まれる
布を張り合わせただけみたいな
真っ赤なズボンに食い殺された
深く暗い寂寥感が胸の底を満たした
僕は長い間考えた
どうしてこんなことに
そして気づいた
黒いズボンも在ったなあ。
< 1 / 1 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop